花粉症

花粉症はこれだけ!-医師が本気で花粉症を勉強してみた-

<まとめ>
⭐︎スギ・ヒノキ花粉症はとっても増えている!
⭐︎花粉症の治療は4つ!
⭐︎とにかくまずは『花粉を避ける』ことが大事!
⭐︎市販薬をうまく使おう!花粉が飛び始める2週間前から予防的に飲むとgood!市販薬でダメなら1度病院へ!


年配の方とお酒を飲みに行くと、「〜癌って検査した方がいいの?」とか「コレステロール高いんだけど薬飲んだ方がいいかな?」とか、色んな身体についての相談を受ける。周りの様子をみていても、健康に関する話題は尽きない。
一方、同世代の若い友人と飲みに行っても、健康に関する質問ってのはほとんど受けない。『今の生活続けてたら、若いうちに体壊すぞ・・・』とアドバイスすべき人は結構沢山いるんだけど。

それでも、「花粉症ってどうにかならないの?何科に行くべき?」「薬全然効かないんだけど!眠くなるし!(怒)」といった相談は、むしろ同世代の友人から、思いの外結構受ける。仲良い友人は今年、花粉が嫌すぎて1か月以上ハワイに逃亡していた(笑)

「花粉症」というキーワードでgoogle検索をすると、めちゃくちゃ膨大な量の情報が出てくる。一通り目を通したけど、正直、根拠のない記述も沢山見られるのが現状。。これでは、何が正しくて何が間違っているのか、分からない。
正直医者でも、「(花粉症は死なないからなあ。)とりあえずアレグラ(抗ヒスタミン薬)出しとくか!」とテキトーに診療している人もいる気がする。。

そこで今回、頼れる花粉症のスペシャリストになるべく、教科書・論文を中心に本気で勉強してみることに。花粉症がどうして起こるか?から改めて復習し、診断の仕方、治療の種類、その他最新の研究までかなり細かく調べてみた。
そして、花粉症で悩む人やその友人・家族、すべての人に読んでもらえるような記事を書いてみることにしました。

すべての人に読んでほしい以上、『花粉症の免疫療法は、マスト細胞と結合するfree IgEを減少する抗IgE抗体療法(Omalizumab)やT cellエピトープを選択的に投与することでT cellの抗原反応性を修飾するペプチド免疫療法、さらに・・・』みたいな専門的な自己満足記事を書いても何の意味もないので、なるべく専門的な言葉を使わず、細かい診断など不要な情報は省き、最低限抑えてほしい情報だけをまとめます。何事も取捨選択!では、スタート!

⭐︎時間のない方は太字だけ追っていただけると幸いです。

【花粉症は増えている?】
花粉症は、増えているんです(花粉症の人は1998年には16.2%でしたが、2008年には26.5%まで増えています)。日本では、特にスギ・ヒノキ花粉症が多い。一般的にスギは2-4月、ヒノキは4-5月によく飛ぶと言われているので、まさに今(4月19日現在)はピークの時期ですね。花粉症が増えている理由として、そもそも飛ぶ花粉の量が増えていること(これは頑張ってもなかなかコントロールできない)や、生活スタイル・環境の変化が挙げられます。飛んでいる花粉が増えているということは、すでに花粉症の人はこれからどんどん辛くなっていく可能性が。。まずはこの記事を読んで、対策や治療について抑えておきましょう!

【花粉症の治療にはどんなものがあるの?】
花粉症の治療には、大きく4種類あります。

1, マスクやメガネを装着するなど、花粉を避ける(抗原回避)
2, 症状を抑える薬を飲む(薬物療法)
3, 完治を目指して、薬で治療する(アレルゲン免疫療法)
4, 完治を目指して、手術で治療する(手術療法)

花粉症は死んでしまうほどの強いアレルギー反応(アナフィラキシーショックといいます)を起こすことはほとんどありませんので、治療によるリスクと得られるメリットを天秤にかけて判断する必要があります。症状の強さや生活スタイルを踏まえて、どう花粉症とつきあっていくか決めましょう。この4種類の治療については、後ほど詳しく解説していきます。

【花粉症って、何科に行けばいいの?】
花粉症で何科にかかればいいか、結構疑問に思う方も多いと思います。これだ!という明確な答えはないのですが、花粉症のコントロールを目指す(症状を抑える治療、対症療法)のであれば内科、症状が強く完治を目指す(完全に花粉症とオサラバする治療、根治療法)のであれば耳鼻咽喉科を受診するのがよいと思います。もし病院受診を考えている方がいたら、是非参考にして頂きたいと思います。

【けど、そもそも病院に行く必要あるんでしょうか?】
何科を受診するのがよいかというお話をした後に何ですが、花粉症は緊急を要する(命に関わる)病気ではありませんので、病院に行く前にまずは市販のお薬で症状を抑える治療を試してみるのがいいと思います。その上で、全然症状がよくならないという場合に、薬についての相談で内科を受診したり、完全に花粉症を治すための治療(免疫療法や手術)について相談すべく耳鼻科を受診する、という順序がよいと思います。
-医療費増大が社会問題となる中で、厚生労働省を中心に、『命に関わらない病気で、その薬が大きな副作用を起こさないものについては、病院での医療を縮小していく』ことが提唱されています(セルフメディケーションといったりします)。これからは患者さんそれぞれが治療について正しく理解し、市販のお薬(OTCともいいます)をうまく使うことが求められるようになっていきます。医療資源も有限なので、本当に高度な医療を必要とする方にしっかり医療が行き届くようにするために、適切な方針だと思っています。一方我々医師としては、世の中に溢れるトンデモ情報やトンデモ本に対抗すべく、適切な情報を世の中に配信し続けることが必要です。

では、花粉症に悩む方にとって一番重要であろう、治療についての細かい説明をしていこうと思います。

【1, 花粉を避ける(抗原回避)
花粉症は原因がはっきりしているアレルギー疾患ですので、最も重要なのは、症状をきたす原因(抗原)である花粉を避けることになります。一番の理想は、花粉がものすごく飛んでいる日は外に出ないことですが、日々の生活でそんなことができる社会人はほとんどいないでしょう(リモートワークできる職場の方はラッキー)。
エビアレルギーの友人がエビを食べようとしていたら、誰でも止めますよね?けどなぜか、花粉症の人には問答無用で出勤させるのが会社というものです(花粉症でショックになり死亡、などのニュースが万一あれば変わるかもしれませんが。。)。
しかし現実をみないといけませんから、できる対策を考えましょう!

ポイントは、
花粉の情報に注意して対策を練ること
・可能なら外出を控えて窓・戸を閉めること
・外出時はメガネやマスクを着用し毛羽立つコートなどは避けること
帰宅時に洗顔・うがい・鼻をかむなどによりすぐに花粉を除去すること
などです。

要は、『敵を知り、可能な限り備えよ。接触してきたらすぐに振り払え。』ということです。他にこんな対策があるよ!などありましたら、皆さまの知恵を是非教えていただけると幸いです。

【2, 症状を抑える薬を飲む(薬物療法;対症療法)】
おそらく最も多くの方がトライしている治療がこちらでしょう。
花粉症の症状を抑えるお薬として最もよく使われているのは、抗ヒスタミン薬という種類のものになります。他にも、ケミカルメディエーター遊離抑制薬やTh2サイトカイン阻害薬など、様々なお薬が使われます。鼻にスプレーする、点鼻薬なんかもあります。
市販の抗ヒスタミン薬だけでも何10種類とあまりに多くのものがあり、正直どれが何だか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、これだけは皆さんに知っておいて欲しいという4つのポイントを確認しておきます。また病院での細かいお薬は覚える必要がありませんので、市販のお薬として購入できるものだけを例に挙げます。

A, 症状の中心がくしゃみ・鼻水の方は、まず第二世代の抗ヒスタミン薬(アレグラFX / 久光製薬 など)を使います。加えて、鼻噴霧用ステロイド薬(AGアレルカットEX【指定第2類医薬品】 / 第一三共ヘルスケア など)を使用すると効果的です。初めてお薬を購入する際は、薬剤師さんにそれぞれの違いを質問するといいでしょう。
-抗ヒスタミン薬には効果が強いけど副作用も強い第一世代と、副作用を抑えたけど効果も少し弱い第二世代があります。第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が出やすい上に、抗コリン作用という作用が強いため緑内障や前立腺肥大症といった病気を持っている人にはタブーだったりします。ですので、まずは副作用を抑えた第二世代抗ヒスタミン薬(アレグラなど)を使うことをオススメします。また、鼻噴霧用ステロイド薬はステロイドの副作用が現れる危険性はほとんどないと言われていますので、最新のガイドラインでは鼻症状の強い方は一緒に使うとgoodとされています。
※詳しく知りたい方はこちらの薬剤師さんの記事が分かりやすくてオススメです。
→https://kusuri-soudan.com/pollen-2018-14316/

B, 症状の中心が鼻づまりの方は、抗ロイコトリエン薬という医師の処方箋が必要なお薬を最初に使いますので、一度病院を受診しましょう。
-花粉症で病院を受診した友人に話を聞くと、ほとんど話を聞かずにとりあえず抗ヒスタミン薬を出されるケースもあるようです。何となく自分の経験に頼って診療するというのは患者さんにとって不利益であると同時に、医学研究に時間を捧げた先生方に失礼な行為です。鼻づまりがメインか、くしゃみや鼻水がメインか。症状も聞かずに薬を処方するような医師がいたら、信頼しないようにしましょう。

C, 症状が毎年出ている方は、花粉症が飛び始める時期を調べ、その2週間前から予防的にお薬を飲むと症状が緩和されることがあります(くしゃみ・鼻水メインなら第二世代抗ヒスタミン薬、鼻づまりメインなら抗ロイコトリエン薬)。
-このように症状が出始める前に行う治療を初期治療といいます。他の初期治療として、重症の患者さんでは花粉ピークの時期に短期間で経口ステロイド薬を内服する場合もあります(副作用が多く、市販では売られていません)。毎年市販の薬だけで凌いでいるという方は、一度内科を受診してみましょう!
D, 花粉症に限りませんが、必ずお薬の用法・用量は守りましょう。またすでに他の病気でお薬を飲んでいる方や、市販のお薬で改善が十分でない方(病院に行くと他の市販にない薬を上乗せできます)、心配な点が少しでもある方は、一度内科を受診して相談しましょう。
-お薬というのは必ず副作用があります。間違った用法・用量はかえって身体の状態を悪くすることがありますので、気をつけましょう。また飲み合わせの悪い薬もありますので、すでに何らかの病気で薬を飲んでいる方も注意が必要です。
また明らかに毎年春の時期だけ強い鼻症状や眼症状が出るという方はほぼ花粉症で間違いないと思いますが、症状が季節によらず出てくる場合など不安・不明な点があれば、病院を受診して花粉症かどうか確定診断をしてもらいましょう。

【3, 完治を目指して、薬で治療する(アレルゲン免疫療法)
ここでは症状を和らげるのではなく、完全に花粉症を治そうと試みる治療について扱います。様々な種類があるのですが、今回は最近注目されている『舌下免疫療法』について説明します(スギ花粉症に限ります)。
舌下免疫療法とは、スギ花粉を体内に取り入れることで免疫をつけ(身体を慣らせて)、花粉症を完治させる治療です。
「そんな治療があるなら、みんなやりたいに決まってるじゃん!花粉症の辛さなめんなよ!」
そんな声も聞こえてきそうですが、この治療は結構根気が必要です。以下、簡単に流れを説明します。

1, まず採血でスギ花粉症であることを確認する。
2, 確認できたら、一回目は医師が見ているところでスギ花粉エキスを服用してもらい、副作用=強いアレルギー反応(口や唇が腫れる、のどの痒み、腹痛、呼吸困難などアナフィラキシーを疑う反応)がないかを確認する。
3, 副作用が強ければ治療は断念。問題なければ以後、毎日一回スギ花粉エキスを舌の下に滴下します。
4, 明らかに途中で完治した場合を除き、原則3年間は治療を継続します。

結構大変ですよね。毎日です、毎日。。しかも三年間。。
しかし、以前の皮下免疫療法(スギ花粉エキスを定期的に注射する治療)と違い自宅でできる治療である点は素晴らしく、保険適用もあります。まだまだ論文の数は不十分ですが、症状を抑えたり、完治したりする症例も少なくないことが報告されています。
あまりに症状が強く、症状を抑える治療では全く効果がないよ!という方は、一度耳鼻科を受診して相談してみるといいかもしれません。

【4, 完治を目指して手術で治療する
最後にご紹介するのは、手術による治療です。
以前は鼻の粘膜を一部切り取るような手術(下鼻甲介粘膜切除術といいます)など入院が必要な手術が主でしたが、最近はレーザーを用いた手術ができるようになり、日帰りでの治療ができます。
-主に、『鼻の粘膜を焼くことで花粉と反応する範囲を減らし』、『神経を変性して花粉への過敏性を抑える』というメカニズムのようです。
ただし身体へのダメージ(医学の世界ではよく『侵襲』といいます)はありますので、症状がかなり強い場合や、薬での治療でコントロールできない場合、副作用や妊娠などの理由で薬がどうしても使えない場合に適応になると考えます。

【まだ花粉症じゃないんだけど、予防ってできますか?】
さてここまで花粉症には4種類の治療があるよ〜というお話をしてきました。それでは、花粉症になる前に予防することはできるのでしょうか。巷には様々な記事が溢れていますが、ここでは医学誌に記載されている、ある程度以上のエビデンスがあることだけを箇条書きにしておきます。参考までに。

・花粉に敏感な体質は、皮膚での花粉との接触によって生まれる(医学的に、『感作』といいます)ことがあり、洗浄や保湿といったスキンケアが重要である。
プレバイオティクスやプロバイオティクスの摂取は腸内環境を整え免疫系を調整し、アレルギー発症を予防する可能性がある。抗酸化作用のある食材や、ω3不飽和脂肪酸にも予防効果があるかもしれない。
-プレバイオティクス・プロバイオティクスについては以下の記事が分かりやすい。
https://lab.mykinso.com/chisiki/20160808-1/
乳児期の気道感染はアレルギー発症に関与するため、家族の禁煙は必須

【最後に】
さて、簡潔にまとめようと思いましたが、だいぶ長くなってしまいました。すみません。
今回の記事で皆さんに伝えたかったことは、【花粉症の治療は現在大きく4種類ある】ということです。全体像を知った上で治療するということは、とっても大事だと思います。
最近はスギ花粉症治療米の開発など面白い研究が出てきていますので、また10年後には治療が大きく変わっているのかもしれません。生涯勉強ですね!

-花粉症でお困りの方へ。
第一に、花粉を全力で避けましょう!まずは市販のお薬を試してみるのがいいと思いますが、症状が強くて大変というときは是非一度医師に相談してみてくださいね!皆さまの症状が少しでも和らぎ、楽しい毎日が送れることを祈っております。

【参考文献】
・アレルギー疾患のすべて 日本医師会
・厚生労働省資料 
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000121254.pdf
・アレルギー性鼻炎:ガイドラインに基づいた診断と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/61/11/61_KJ00008425758/_pdf
・Wasaka.Y et al: Oral immunotherapy with transgenic rice seed containing structurally disrupted Japanese cedar pollen allergies, Cryj1 and Cryj2, against Japanese cedar pollinosis. Plant Biotechnol J, 2013.

 

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